大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成2年(わ)2607号 決定

国籍

韓国(全羅南道務安郡夢灘面沙川里五一〇)

住居

大阪府八尾市西山本町四丁目三番一五号

金融業

安充煥

一九二五年四月一〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、等裁判所は、検察官宮下準二出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪市天王寺区上本町六丁目二番一二号において、「名広物産」の名称で金融業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと考え、

第一  昭和六一年分の総所得金額が一億七四九八万三八四三円(別紙(一)所得金額及び純損失の繰越控除計算書、別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、仮名及び借名で株式の継続的取引を行って同取引による収入のすべてを除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和六二年三月一三日、大阪市天王寺区堂カ芝二丁目一一番二五号所在の所轄天王寺税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額がなく、還付を受ける源泉所得税額が一一八万三二一二円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億八三〇万三八〇〇円と右申告税額との差額一億九四八万七〇〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた、

第二  昭和六二年分の総所得金額が二億二九一万七五七六円(別紙(一)所得金額及び純損失の繰越控除計算書、別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、前同様の方法により所得を秘匿したうえ、昭和六三年三月三日、前記天王寺税務署において、同税務署長に対し、昭和六二年分の総所得金額が六四〇万三一八一円で、これに対する所得税額が八万八五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億一三二一万三六〇〇円と右申告税額との差額一億一三一二万五一〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた

ものである。

(証拠の標目)

(注)括弧内の算用数字は証拠等関係カードの検察官請求分の請求番号を示す。

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通(40ないし42)

一  被告人に対する収税官吏の質問てん末書九通(31ないし39)

一  樋口信雄(13)、野田哲郎(三通、14ないし16)、長田和男(二通、17、18)、河野眞英(19)、楊川勝一(20)、安保(21)、李邦晴(22)、松山幸枝(二通、23、24)、藤岡俊之(25)、松田英親(26)に対する収税官吏の各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書九通(7ないし12、43ないし45)

一  天王寺税務署長作成の証明書(5)

一  検察事務官作成の捜査報告書(6)

判示第一の事実について

一  天王寺税務署長作成の証明書(3)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(1)

判示第二の事実について

一  天王寺税務署長作成の証明書(4)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(2)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は所得税法二三八条一項に該当するので、いずれも所定の懲役と罰金とを併科することとし、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により各罪につき定めた罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 仙波厚)

別紙(一)

所得金額及び純損失の繰越控除計算書

〈省略〉

所得金額及び純損失の繰越控除計算書

〈省略〉

別紙(二)

修正損益計算書

〈省略〉

別紙(三)

修正損益計算書

〈省略〉

別紙(四)

税額計算書

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例